|野上哲斉|相原弘子|林 暁兵|霧野萬地郎|古田けいじ|北村ゆうじ|宮地ゆうこ|多田有花|やぎたかこ|
■林 暁兵■
2日がかりで拝読しました。美しく静かな日本語に出会って爽やかな感動が残りました。中でも特に好きな句を:
パソコンを消して露散る夜となりぬ
さわやかに行きし燕のもどり来る
梅雨明けの海の真上を渡りきる
昼顔を眸に映し旅ひとり
手袋に手を入れ五指を広げみる
呼んでみるかなたの空の雲の秋
胸うちに今日の夏野を棲まわせる
白ばらの空気を巻いていて崩る
停船の灯のはなやげる大晦日
朝すずし湯の沸く音を傍におき
初夏の夜の電車傾きつつ曲がる
鐘の音のわれを包んで夏空へ
ラインのぼる巨船の人の裸かな
竹落葉わが胸中を降るごとし
登山靴どっかと冬の日に乾かし
雪の日の湯にまるまると赤ん坊
菜をくくる藁の青くて年暮るる
泳ぎ子の母呼び父と沖にいる
新米の飯を丸き子の口へ
青葉木菟湯にとっぷり子と沈む
白槿十年たちまち過ぎていし
さやけさの中へ起き出し四肢があり
麻酔覚めるに従い壁に大晦日
台風来つつある夜の卓の丸い梨
枯蓮となりつつ水に傾ぎゆき
水菜洗う長い時間を水流し
長き髪洗われ天神祭りの子
遠くの海へ出ていて揚羽甲板へ
カーディガン月光に冷えあす成人
底冷えや缶にて浮動パイナップル
■その2■
今回の100句を拝読していてある傾向の絵画を思い浮かべました。ローランサン、東郷青児、モジリアニ、、、、の感じです。どの句も表現が洗練されていて、選ぶなんて難事ですが、私自身の勉強のために。
【春】
春の蕗提げしわれにも風が付く
身を固く春雪吹くを帰り来る
芽柳のるると色燃ゆ向う岸
春寒し木を打ち人を呼び出せリ
白木蓮あふれ咲きいるここの家も
【夏】
アカシヤの花に青空寄りかかる
新緑にひとり自尊を強めける
大川に潮の匂うや三社祭
明易きときをラジオのミサ合唱
緑蔭の鴨も緑に染み歩む
ヒマラヤの夏嶺の罌栗を思わずや
遠巻きの蝉音となって今朝の空
にが瓜の苦さに酔いて月すずし
青田みな青嶺へ靡き吹かれける
【秋】
葛の花匂わすほどの風が起き
とんぼ触るる水に草かげ空のかげ
鶺鴒のぱっぱと石を水を飛び
月澄んでガラス巡らす研究棟
ひつじ田の金色見せて予讃線
【冬】
元日の木々と空とに迎えられ
冬の夜の捨つべきものを分け終えぬ
枯草を踏みおり人に離れおり
寒日和くだきし餅の干されける
しみじみと刈田に差して原始の陽
鴨に目をやりて傘より雨しずく
■北村ゆうじ■
正子先生の自選100句を読んで
好きな句
春月の光りにも触る午前二時
正子先生の句は読みてにやさしく語りかけてきます、そしてなんといっても句がお洒落で、勉強になります。素敵な句を有り難うございました。勉強させて
頂きます。
■相原弘子■
■1966年〜2000年■
■2001年〜2002年■ ■やぎたかこ■
正子先生の句は、自然との一体感の中に身を置いて自らとの対話から生まれる
作品と思われます。リリシズムというのでしょうか、詩があって、水彩画のような美しさを感じます。もののうつくしさをこんふうに引き出せたら幸せだろうなあと憧れます。
【春】
【夏】
【秋】
【冬】 ■霧野萬地郎■
正子先生の100選からは、いずれも女性的なやさしい措辞に研ぎ澄まされた感覚が見えて、なるほど、このような感じ方があるのかと感心させられます。同じものを観察、写生をしても、句に五感すべてに訴える力を感じます。季語の使い方が実に巧みで、切れ字がなく、一気にひとつの現象を詠みきるあたりがその力の根源ではないかと、思っています。これからも、選者詠を注目して、勉強させていただきます。
特に好きな10句です。マンジロウ南瓜が良いですね!
梅の花遠きに咲きて白さ満つ ■多田有花■
正子先生の自選100句、楽しませていただいたと同時に勉強させていただきました。全身の感覚を使って対象をとらえていらっしゃる様子、またその感覚を的確な言葉として句に表現されているところがやはり凄いと感じま
した。俳句は深いなあとも。
私の好きな句を四季それぞれに5句ずつあげさせて
いただきました。
春雷の稲妻あかりを胸に受く
聖書繰る野の青麦を思いつつ
丈低きりんどう草に澄みてあり
あたらしき薪を傍積み暖炉燃ゆ ■宮地ゆうこ■
正子先生の句には流れるような音の美しさがあり、心をゆだねるとまっすぐイメージが飛び込んできます。言葉のしなやかさと明確さが合わさり、日本の原風景のような透明な心を感じます。
手渡されながら花桃散りいたり ■野上哲斉■
正子先生から、自選100句欄を設けましたと聞かされてから、随分日が経っております。やっと投稿しましたところ、先日早々と、懇切なるご批評ありがとうございました。人に批評されることの喜びを、今更のように、感じております。
受験子の髪ふっくらと切り揃う
受験子の髪ふっくらと切り揃う
鉛筆を削る木の香の春めくを
花馬酔木しずけきものに山の道
アカシヤの花に青空寄りかかる
新緑にひとり自尊を強めける
聖書繰る野に青麦を思いつつ
大川に潮の匂うや三社祭
浜名湖の水の五月を新幹線
緑陰の鴨も緑に染み歩む
わが視線揚羽の青に流される
淀川の風が日傘を吹き上げぬ
稲穂田の隅にごぼごぼ水が鳴り
とんぼ触るる水に草かげ空のかげ
ポプラ黄葉雲寄り雲のまた流る
鶺鴒と蜻蛉と浅き田の水に
月澄みぬもっとも明るき池の面
寒林を行けばしんしん胸が充つ
冬木立名を呼びくれしは赤き日か
枯れ草を踏みおり人に離れおり
しみじみと刈田に差して原始の陽
芽麦まで遠き夕陽の差しいたり
底冷えや缶にて浮動パイナップル
長き髪洗われ天神祭りの子
燕子花を抱え一束の湿り
矢車の星空深きにまわる音
夏まつりのふうせん浮かせ子ら眠る
(ベルリン)
カスターニエの青き実曇天よりもげば
盆歌の抜ける一村星の村
鴨泛かぶ池の青さのまっ平ら
新緑の翳るときあり水があり
水に触れ水に映りて蜻蛉飛ぶ
梅の花遠きに咲きて白さ満つ
句美子
受験子の髪ふっくらと切り揃う
宵風の白みて強し犀星忌
麦焼きの煙遠きを満たしける
浜名湖の水の五月を新幹線
白桃の無疵を少女に剥き与う
吾亦紅枯れる紅さを灯にかざす
手に触れて固き林檎を二つ選る
枯草を踏みおり人に離れおり
鈍行のことこと芽麦を渡りいる
好きな句を選ばせていただきました。
手渡されながら花桃散りいたり
芽柳のるると色燃ゆ向こう岸
来るまでを辛夷のひかり見て待てる
春水の流るる音をパソコンに
濃きお茶に春の灯しを入れて飲む
受験子の髪ふっくらと切り揃う
鉛筆を削る木の香の春めくを
アカシヤの花に青空寄りかかる
階の濡れしに青葉映りたり
緑蔭の鴨も緑に染み歩む
てのひらに書を読む梅雨のすずしさに
わが視線揚羽の青に流される
遠巻きの蝉音となって今朝の空
白桃の無疵を少女に剥き与う
とんぼ触るる水に草かげ空のかげ
杉の秀に秋の入日の溜まり来る
コスモスに水に祭りの神の来る
香たきぬ月より風を吹かしめて
冷たさも露けさもスライスオニオン
寒林を行けばしんしん胸が充つ
冬木立名を呼びくれしは赤き日か
冬の夜の捨つべきものを分け終えぬ
冬鴎白くて白い船に来る
暮れなむと湖のあかりの冬青し
芽麦まで遠き夕陽の差しいたり
手渡されながら花桃散りいたり
明易きときをラジオのミサ合唱
わが視線揚羽の青に流される
青田みな青嶺へ靡き吹かれける
稲穂田の隅にごぼごぼ水が鳴り
とんぼ触るる水に草かげ空のかげ
マンジロウ南瓜鉄色宿坊に
手に触れて固き林檎を二つ選る
水仙の枯れし終わりを折りて捨つ
身を固く春雪吹くを帰り来る
芽柳のるると色燃ゆ向こう岸
春月の光りにも触る午前二時
鉛筆を削る木の香の春めくを
わが視線揚羽の青に流される
急行の海光まとい蓮葉過ぐ
にが瓜の苦さに酔いて月すずし
青田みな青嶺へ靡き吹かれける
とんぼ触るる水に草かげ空のかげ
月明に栃はゆたかに葉を広げ
月澄みぬもっとも明るき池の面
ひつじ田の金色見せて予讃線
冬鴎白くて白い船に来る
水仙の香を吸いながら活けており
暮れなむと湖のあかりの冬青し
しみじみと刈田に差して原始の陽
来るまでを辛夷のひかり見て待てる
独活放つガラスボールが水の玉
受験子の髪ふっくらと切り揃う
さざめきてポプラ若葉は雲に会う
明け易し山の水栓使いしあと
とんぼ触るる水に草かげ空のかげ
香たきぬ月より風を吹かしめて
月澄みぬもっとも明るき池の面
寒林を行けばしんしん胸が充つ
薪ストーブ静けき熱をわれらに放ち
しみじみと刈田に差して原始の陽
正子様の100句は、勿論素晴らしい俳句ばかりですが、私なりに好きな句を選んでみました。そこには、母を思う顔、自身母の顔、主婦の顔、自然界にひたる顔、時として編集人の厳しい顔、折しも、お忙しい中、ご自愛を祈ります。
春苔に泉滴り深きみどり
春寒し木を打ち人を呼び出せり
花馬酔木しずけきものに山の道
牡丹を大きな風が吹き上げる
麦焼きの煙遠きを満たしける
てのひらに書を読む梅雨のすずしさに
白桃の無疵を少女に剥き与う
古き昔の母の花なりおしろい花
とんぼ触るる水に草かげ空のかげ
鶺鴒のぱっぱと石を水を飛び
冷たさも露けさもスライスオニオン
鈍行のことこと芽麦を渡りいる
元日の木々と空とに迎えられ
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