愛吟抄/渡部珂夏子

ー愛媛新聞社発行「えひめ奥様ジャーナル」平成12年11月号よりー


新米の飯(いい)を丸き子の口へ 高橋正子

 昭和61年刊、「月の樫」所収。           
収穫のよろこびは、それを産するものも、授かるものも、 ひとしく頒(わか)ちあえるよろこびです。新米の美味し さは、まずひと口、食した時の、あの言葉に尽くせぬ豊か で満ち足りた想(おも)いに勝るものがないと感じさせる ところにあるのです。                
 掲出句のよさは、その想いを、ひとりではなく、最愛の子 とともに頒つことで、よろこびが重層し、収穫の秋の感動 を、さらに深く、大きく展開させたところです。”新米の 飯”とたたみかけた言いまわしに、それがよく表されてい ます。その上に、”丸き子の口”という、より具体性に富 んだ表現によって、情景がさらに鮮明さを増しています。 ”丸き”とは、豊穣(ほうじょう)と母性の視線がとらえ 得た素晴らしい比喩といえましょう。         
 奇を衒(てら)った言葉遣いや、思わせぶりな技巧は排除 されています。そこに作者の、俳句に取り組む姿勢の表れを、見るのです。俳誌「水煙」編集人として活躍中。